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セザンヌの故郷 エクス・アン・プロヴァンス(Aix-en-Provence)
季節は冬の時期ですが、南仏の田舎町を巡った時のことを綴ります。
ニースでレンタカーを借りて、エクス・アン・プロヴァンスへ向かいました。
南仏には芸術家にゆかりのある町や村がたくさんありますが、ここは、ポール・セザンヌの生まれ故郷です。
街が近づいてくるとサント・ヴィクトワール山が見えてきます。セザンヌは一時期、パリで絵画の勉強をする為に暮らしたことはありましたが、生涯の多くの時間を故郷のエクス・アン・プロヴァンスで過ごして制作活動を行っています。彼の絵画にはヴィクトワール山を描いた作品も多くあり、初めて実際の山を見た時でもセザンヌの絵画の山そのものだったので、すぐにわかりました。
パリのオルセー美術館などでもセザンヌをはじめとする印象派や同時代の作品は観てきましたが、エクス・アン・プロヴァンスには、セザンヌのアトリエも残っています。
街の中心からは歩くと少し距離がありますが、ローヴの丘と呼ばれる場所に彼がアトリエとして利用していた一軒家があります。セザンヌの晩年、1902年~1906年までこのアトリエは利用されていました。彼が静物画を描いたオブジェや実際に利用していた絵の道具、家具なども展示されています。セザンヌの絵を代表する「大水浴図」も、ここで描かれました。この大作の搬出入の為に、2階のアトリエには大きな窓が特注されたそうです。実際に訪ねて見ると、窓からは南仏の沢山の光が差し込む落ち着ける空間で、エクス・アン・プロヴァンスを生涯愛したセザンヌを少し身近に感じることができました。
エクス・アン・プロヴァンスの旧市街は、噴水が多いことでも知られています。メインストリートはミラボー通りで、お店やカフェなどが軒を連ねていますので、アトリエ見学の後は、のんびり散策を楽しむのもいいですね。
この通りには、200年以上の歴史を持ち、芸術家も通った「レ・ドゥー・ギャルソン」という老舗のカフェがありました。筆者が訪れた時にはまだお店がありましたが、2019年の後半に火事がおきて残念ながら閉店してしまいました。(下の写真のミラボー通りは冬なので寒々としていますが、夏には通りを歩く地元の方々で賑わうことでしょう。)
旧市街を散策していると、市庁舎広場の近くにある一軒のマドレーヌ専門店が目につきました。冬にも関わらず、地元のお客さんも並んでいて人気の様子。試しに買って食べてみたところ、素朴でとても美味しかったのでエクス・アン・プロヴァンスに行ったら是非食べてみてください。
Christophe Madeleines
住所:4 Rue Gaston de Saporta, 13100 Aix-en-Provence
定休日:日曜・月曜
プロヴァンス リュベロン地方の珠玉の村々 6選
筆者は高校を卒業し大学に進学するまで、生まれ故郷の西日本の小さな田舎町で育ちました。学生時代に読んだ本の中で印象に残っていた一つが、ピーター・メイルの「南仏プロヴァンスの12カ月」でした。
ロンドンの広告業界で働き忙しい日々を送っていた作者のピーター・メイルが旅行で何度も南仏プロヴァンスを訪れるうちに、その地方の魅力に魅せられ、古い農家を買い取って移住し、そこでの暮らしや季節の移ろい、地元の人々との交流などを綴ったエッセイです。文化習慣の違いから戸惑いなども描かれていますが、ゆっくりと流れるプロヴァンス時間と、美味しそうな食事、オリーブの木々が茂る南仏の情景など、どれも日本にはないもので、本を読んだ当時、プロヴァンスのリュベロン地方は訪れてみたいと憧れた場所の一つでした。
1) ボーニュー(Bonnieux)
本当は、ゴルドあたりに宿泊したかったのですが、南仏の田舎では冬季はクローズしているホテルが多く、泊まってみたいと思うホテルがことごとく休業中だった為、この旅行ではボーニューの村のはずれにあるホテルに宿泊しました。宿泊したのは「Le Domaine de Capelongue」というホテルですが、敷地内に、レセプションやレストラン棟、屋外プール(夏は気持ち良さそうです)、アパルトマンタイプの客室などがあり、なかなか素敵でした。
訪れた季節が冬だったこともあり、リュベロンの村々はどこも閑散としていましたが、個人的にはこの地方の田舎の雰囲気を味わうことができ、ボーニューでは朝や夕方の特に静かな時間帯にもゆっくりと周辺を散歩することができたので満足でした。
2) メネルブ(Menerbes)
ピーター・メイルがメネルブの村はずれに住んでいたこともあって、一躍有名になった村です。(ピカソも一時期、この村に滞在していたそうです。)
ここも「フランスの最も美しい村」に認定されていますが、訪問時期が冬だったこともあり、ほとんど人を見かけませんでした。高台にある静かな村をぐるっと散策し、周囲に広がる畑や民家を見下ろすと、そこには霞がかった冬枯れの風景が。まるで絵画の世界のような静寂のに包まれた美しい田園風景が広がっていました。
冬の間は休館していますが、夏に訪問したなら「トリュフとワインの博物館(Maison de la Truffe et du Vin)」を訪れてもよいと思います。リュベロン地方で生産されるワインの試飲や購入もでき、トリュフを使った料理を提供するレストランも併設しています。
3) リル・シュル・ラ・ソルグ(L’isle-sur-la-Sorgue)
リュベロン地方の中で行ってみたかった町の一つがリル・シュル・ラ・ソルグでした。「ソルグ川に浮かぶ島」という名前の町で、実際に町中には美しい清流が流れています。
本当は、日曜日に合わせて訪問したかったのですが、残念ながら休暇日数の関係で、日曜日の訪問は叶わず。。。というのも、この町では日曜日にアンティーク市が有名なのです。(アンティーク好きの筆者は、いつかまた日曜日に合わせて訪れてみたいと密かに思っています・・・。)
残念ながらアンティーク市は見られませんでしたが、町の中にも、あちこちにアンティークショップがあり、覗いてみるだけでも楽しめます。
町中には、おすすめの「La Prevote」という修道院を改装したシャンブル・ドット(B&Bや民宿のような宿泊施設)もあります。という通常、郊外などに多いシャンブル・ドットですが、ここは町の中心にあり散策にも便利です。部屋数は5室と少ないですが、部屋ごとに調度品や雰囲気、趣が異なっており、オーナーのセンスが反映されています。どのお部屋も可愛らしいので女性の方には気に入っていただけるのではないかと思います。
また、ここには併設のレストラン(レストランの下には川が流れています!)もあり、食事だけをとることもできるので、宿泊をしなくても雰囲気を味わうことができます。
町をふらふらと歩いていると、素敵なコンフィズリー(confiserie)のお菓子屋さんがありました。コンフィズリーとは砂糖菓子のことですが、プロヴァンスでは特に郷土菓子のフルーツの砂糖漬け「フリュイ・コンフィ(Fruits Confits)」をよく見かけます。
今回たまたま見つけたお店の名前は「Confiserie Lilamand」ですが、後で調べてみると元々は1866年から続くサン・レミ・ド・プロヴァンスに一号店がある老舗のお菓子屋さんで、そのレシピは5世代に渡って引き継がれているそうです。このリル・シュル・ラ・ソルグのお店でも、色とりどりのフリュイ・コンフィが綺麗に並べられていていました。
4) ゴルド(Gordes)
ここもまた、「フランスの最も美しい村」に認定される村の一つです。リュベロン地方には、認定されている村が幾つかありますが、その中でも特に美しい村と言えると思います。
村に入る手前に写真スポットがあり村の全景が見られますが、岩山の上にたつ「鷲の巣村」と呼ぶのに相応しく、要塞のようにも見える村の眼下には、リュベロンの谷が広がっています。遠目にのぞむ村は優しい蜂蜜色をしていて本当に絵になります。冬は空いているお店が限られ、訪れた2月はとても静かでしたが夏場は観光客で賑わいます。
村には、泊まってみたい素敵なホテルもあります。フランスのホテルの格付けは1つ星~5つ星までありますが、2010年に新たに5つ星を越える最高級のホテルとして「Palace(パラス)」のクラスが創設されました。
2020年8月現在、フランス国内で25軒のホテルが「パラス」の称号を得ていますが、半数はパリにあるホテル(例えばジョルジュ・サンクや、プラザ・アテネ、クリヨンなどの有名ホテル)です。そんなホテルに名を連ね、ゴルドにある「La Bastide de Gordes」も「パラス」の称号を得ています。2017年に改装し、リーディングホテルズにも加盟している5ツ星ホテルなので値段はお高いですが、憧れるホテルの一つです。(残念ながら冬季はクローズしています。)
5) ルシオン(Roussillon)
この村も「フランスで最も美しい村」の一つに選ばれている村です。村の中の建物は、どこも褐色というかオレンジがかった黄土色をしています。というのも、この村はオークル(黄土色)顔料の産地として知られていて、19世紀~20世紀初頭の最盛期にはヨーロッパ中に輸出もされていたのだそうです。鉄分の含有量が多いため、私たちが想像するオークル色よりもルシオンの土の色は赤みが強く、村全体が赤い村、といった印象でした。
6) ルールマラン(Lourmarin)
ボニュー郊外で宿泊した帰り、ちょうど通り道だったこともあり、ルールマランにも立ち寄りました。小規模ながら朝市も開かれていて、本当に地元の人々が訪れるマルシェといった風情でした。訪れたのは冬の終わり2月頃でしたので、マルシェでもミモザの花が売られていて、すぐそばまで近づいている春を感じさせてくれました。(余談ですが、プロヴァンス地方からニースに戻る際、折角なのでミモザ街道を通りました。所々にミモザの黄色い花が咲いていて、冬の旅では色々な場所がクローズしていて寂しい部分もありましたが、一方で、この季節ならではの景色が味わえたのも良い思い出です。)
まとめ
プロヴァンスの村の雰囲気を存分に味わえるリュベロンの村々は、田舎好きの方にはとてもおすすめできると思います。冬季はホテルやレストラン、博物館などもクローズしているところが多いので、できれば春から秋にかけての季節の良い時期に訪れたいところです。さらに季節が合えば、ラベンダーの花の時期などもおすすめです。リル・シュル・ラ・ソルグ以外は電車では行きにくいところなので、効率良く廻るにはアヴィニヨンやマルセイユなどから出ている日帰りツアーなどを利用するのも良いと思います。
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