南仏プロヴァンスの夏の風物詩 一面に広がるラベンダー畑

筆者は仕事の関係で、連続した休暇が取れるのは冬場の時期が多いのですが、6月下旬に休暇が取れた年にニースを拠点にヴァランソル高原を訪れました。

ラヴェンダーの花咲くヴァランソル高原(Valensole)

6月下旬から8月上旬にかけての南仏はラベンダーの季節です。アヴィニヨンに近いセナンク修道院周辺などが有名ですが、エクス・アン・プロヴァンスやニースからも比較的近いヴァランソル高原もプロヴァンス地方で人気のあるラベンダーの産地です。
プロヴァンスのラベンダーといっても実は種類があります。一般的に、標高7、800メートル以上の高原で栽培される真正ラベンダーのラヴァンドゥ(Lavande)は主に高品質なエッセンシャルオイルや香水に利用され、700メートル以下の土地でも栽培ができるラヴァンダン(Lavandin)は、より少ない量でエッセンシャルオイルを抽出でき、香りも強いため、石鹸や洗剤、芳香剤などに加工されています。(オイルなどはラヴァンドゥ(Lavande)を利用したものの方が、希少性から値段が高くなっています。) 花はラヴァンダン(Lavandin)の方が、より濃い紫色をしていて、いずれの種類も南仏で栽培される代表的なラベンダーの種類です。
筆者はこの時は4人でニースから車をチャーターし、ヴェルドン渓谷の一部を走ってヴァランソル高原を訪れました。一面に広がるラベンダー畑は圧巻で、ドライブ途中に何度か車を停めて写真ストップを取りました。

一面に広がるラベンダーの畝
ラベンダー畑を歩く地元の家族連れ

ヴァランソル高原に近いシャンブル・ドットで知人とのランチ

ヴァランソル高原にラベンダーを見に行った日、知人に招待してもらい、とあるシャンブル・ドットを訪れました。
シャンブル・ドット(Chambre d’hôte)とは、フランス版のB&B(ベッド&ブレックファスト)、民宿のようなものです。元々、シャンブル(Chambre)は部屋を、オット(hôte)はオーナーを意味するフランス語なので、家庭のゲストルームや利用しなくなった部屋を旅行者に提供し、オーナーさんも同じ敷地内に住んでいるケースが多くなります。必ずしも宿泊施設を本業としているとは限らず、本当にピンからキリまでありますが、個人的には、その土地の特徴がよく分かったり、オーナー家族との素敵な出会いやホームステイのような気分を味わえたり、個性的なインテリアや美味しい朝食を楽しめたりすることも多いので、敢えてホテルではなく、シャンブル・ドットに泊まることもあります。
今回は、知人の知り合いのシャンブル・ドットに招待いただいたので、オーナー家族と一緒にランチを食べる機会に恵まれました。(このシャンブル・ドットでは通常、昼食は提供していないのでプライベートでお招きいただいた形です。)
知的な雰囲気のマダムと90歳を越えてもなお素敵でお洒落なおばあ様が出迎えて下さり、シャンブル・ドットのお部屋なども見せてもらうことができました。
ご馳走になった昼食はフランスの家庭料理で、食器のチョイスも可愛らしく、さりげなく添えられたラベンダーの花も素敵でした。このようなオーナーの個性が光るのが、シャンブル・ドットの良さだと思います。
メインディッシュが来る前にバゲットと自家製ディップをいただきましたが、これがまた美味しく、危うくそれだけでお腹がいっぱいになりそうでした(笑)。
会話を楽しみながら、ゆっくりとお食事を楽しむフランスの食事スタイルを体感することができ、束の間ではありますが日本での忙しい日常を忘れ、フランス流のバカンスを楽しめた気がします。

シャンブル・ドットの看板
エントランス前の中庭
インテリアも素敵
テーブルセッティングと手作りディップ
柔らかく煮込んだ牛肉が美味しい
さりげなく飾られたラベンダー

ニース~ヴァランソル高原のドライブ ヴェルドン渓谷と自然公園

ニースからみて北西、マルセイユやエクス・アン・プロヴァンスからみて北東に位置しているのがヴェルドン地域自然公園です。自然公園内にあるヴェルドン渓谷は日本ではまだあまり知られていませんが、ヨーロッパのグランドキャニオンと称され、太古の昔に氷河によって削られた岩山が荒々しく切り立つ、迫力の景観が見られる一帯です。
途中、湖(サント・クロワ湖)を見下ろす写真スポットなどもあり、絶景のドライブルートになっています。(運転するにはかなりの山道ですので、慣れていない方には怖いかもしれません。。)トレッキングコースも沢山ある他、川や湖でのカヌーなども楽しめ、フランス人の間でも人気があります。

岩山が迫るヴェルドン渓谷
途中に見えるサント・クロワ湖

ヴェルドン地域自然公園にある美しい村 ムスティエ・サント・マリー

今回の旅行では残念ながら立ち寄りませんでしたが、自然公園の中にムスティエ・サント・マリー(Moustiers Sainte Marie)という村があります。ここは、フランスの「最も美しい村」のひとつにも認定されていて(2020年7月現在)、可愛らしい旧市街と背後に迫る切り立つ岩山が印象的な村です。17世紀から伝わる伝統的な陶器の村でもあり、村には陶器博物館やショップを併設する陶器工房(Atlier Soleil)などもあります。
また、この村にはアラン・デュカスが手掛けたオーベルジュ「La Bastide de Moustiers」があります。宿泊もできる全13室の小さなオーベルジュですが、ミシュラン1ツ星(2020年度版ミシュランガイド掲載)のレストランを有するお食事が自慢の宿です。

背後に岩山が聳えるムスティエ・サント・マリー

「フランスの最も美しい村」協会とは

1982年にフランスのコロンジュ=ラ=ルージュで設立された協会で、現在159の村が登録されています(2020年7月現在)。 認定されるには条件があり、人口が2千人以下であることや、最低2つ以上の自然遺産や歴史的建造物などがあること、また、観光客の受け入れが整っていることなど、厳しい選定条件が設けられています。
フランス各地に点在する輝く小さな村の観光と、経済活動の促進を目的として設立された協会ですが、その考え方はベルギーやイタリアなど他のヨーロッパの国々や日本にも波及し、世界的な広がりをみせています。
個人的には、ヨーロッパや日本の田舎の素晴らしさを後世に伝えていくという「地域資源の保護」や「地域活性に繋がるブランド化」への取り組みは、とても素晴らしいことだと感じます。
フランスの最も美しい村協会のサイト(フランス語のみ)はこちら
日本で最も美しい村連合のサイトはこちら

「フランスの最も美しい村」の目印

まとめ

ヴェルドン渓谷やヴァランソル高原など、車がないと行きにくい場所ではありますが、都市での滞在だけでは分からないフランスの魅力が味わえる場所です。ラベンダーが見られる時期は限られますが、ニースやエクス・アン・プロヴァンスからの日帰りツアーなども出ているので、上手に利用して観光に組み込んでみると良いと思います。
また、シャンブル・ドットについては別の機会に紹介しますが、Booking.comなどでも取り扱っていたりするので、訪問希望地や希望に合うところがあれば、旅行に取り入れてみると、より印象深い滞在を楽しめると思います。


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